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 第2回 古文書が読みたい!

NHK大河ドラマ「西郷どん」の放映期間中である先月中旬頃、
西郷隆盛直筆の漢詩草稿が発見されたというニュースがあった。(京都新聞2018年10月10日付)
「西郷が残した漢詩を研究する上で貴重な史料だ」と鑑定者のコメントにもあるように、
多少なりとも日本史に興味のある者としては、是非とも自分の目で読んでみたい内容だ。
だが問題は、私のような現代人には「くずし字」の判読が難しいということだ。

自分の教養の無さを棚に上げて、
「なんやねん、このミミズみたいな文字は・・・読めない・・・無念・・・」と、何度思ったことだろうか。

くずし字とは
(ここでは主に江戸時代に多く使われた草書(青蓮院流)限定で説明しています)
京都・粟田口青蓮院の第35代門跡尊円法親王(1298―1356)の書流。
法親王は歴朝屈指の能書伏見皇の皇子。
書をよくし、その穏和で平明な書風は多くの人々に愛好されて、追随する者が輩出、
一つの書流を形成した。尊円流、青蓮院流、あるいは粟田口流とよぶ。
以後の青蓮院門跡は代々その書風を継承、広く用いられたが、
とくに江戸時代になって圧倒的な盛行をみた。
御家流の名でよばれ、朝廷、幕府の公文書をはじめ、諸大名から市井の寺子屋の手本にまで登場した。
(日本大百科全書(ニッポニカ)の解説)
読んでみよう!
読むとはいっても古文書を読解し訳本を出版する訳でもないので、大意をつかむ。
というくらいのものだが、まずは誰しも思いつくものが辞書、辞典の類いである。

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児玉幸多編「くずし字用例辞典」(東京堂出版)(私もこれ使ってます(^_^))などを
片手に地道に読み進むのだが、もっと手軽にもっとスマートに学ぶ方法があるようだ。
くずし字がスマートフォンで学べるのである。(無料使用可能なもののみ紹介)

くずし字学習アプリ「KuLA」
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2016年から公開されているアプリ。こちらの公開は衝撃的で随分と話題になった。

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一文字ずつ丁寧に覚えていく学習方法。
ひらがなの「け」。全部「け」。一個でよくない・・・?現代人で良かった・・・。

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学習が進んだ方の力試しのようなページ。方丈記やなぞなぞ双六、名刀紹介集もある。
新選組の沖田総司愛用の「加州清光」の記載もあるよう。
とうらぶファンの方もご覧になっているのだろうか。

変体仮名あぷり
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その名の通り、ひらがな専用。

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こちらも一文字ずつ丁寧に覚えるタイプ。数も多く、似たようなくずしもあるので根気が必要。
しかし、これを覚えてしまえば漢字を読む際に偏や旁を判断する材料にもなり、侮れない。
MOJIZO
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2017年(スマホ・タブレット版)から公開されている。
東京大学史料編纂所と奈良文化財研究所共同開発されたシステム。
制作担当者クレジットを見てみると、奈良文化財研究所の馬場さんのお名前を発見。
朝日放送「探偵ナイトスクープ」の神回といわれる、
2011年1月7日放送「レイテ島からのハガキ」にて、大活躍された方だ。
(他にもブラタモリなどでも活躍されている)

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画像選択の枠をタップ、私のスマホに偶然存在していたくずし字画像を選択。
解析をタップすると、
奈良文化財研究所と、東京大学史料編纂所のそれぞれのデータベースから近いと判断された文字が
解析結果としてズラッと並ぶ。奈文財の木簡感がたまらない。
今回解析する文字として選択した画像は、「色」という漢字のくずしなのだが、

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左側の画像は奈良文化財研究所、中央は東京大学史料編纂所の解析結果の一部だ。
ありました!「色」こちらをタップすると、「色」のくずしバリエーションが現れる。
誰の筆跡であるか明記されている文字もあるので、その名前を見ながらドキドキするのも楽しい。

MOJIZOは、他2つのようなアプリ側から提示された文字を読み覚えていくのではなく、
利用者が解析したい文字の画像を準備し、それを膨大なデータベースの中から近い文字画像を導き出す
というシステムだ。ただ一文字につきかなりの数が提示され、どの文字が該当するのかを特定するには、
文章の前後等から判断したり、辞書を引くなどする必要もあるだろう。
しかし、この方法だと実際の古文書をテキストとして使用し、
読みながら学ぶというスタイルも可能で、読み物である分、学習意欲も湧くかもしれない。

最後に。
慣れない文字をチマチマと一文字ずつの読解に苦戦している隙に、
AI(人工知能)がササッと読んでくれるのではないの?という疑問が湧く。
国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター「くずし字チャレンジ」のように
「古典籍を全自動でテキスト化してくれるソフトウェアは、まだこの世の中には存在しない」と
いうことだが、開発中であることは間違いない。今後の発表にも期待するところである。

だが、AIが古文書を瞬時にテキスト化してくれるといえども
解析しきれない部分もあるのではないだろうか。例えば「紙面の空気」を読むこと。
急いで書いているのか、怒りをぶつけているのか、淡々とした作業なのか。
そしてその古文書が、歴史上どういった立場のものなのか、という事象の読解である。
人間の読解力と最先端の技術の両輪で、研究が進んでいくことを望んでいる。

話題が逸れることは重々承知だが、もう一つ期待していることがある。
歴史上の人物の筆跡を使ったフォントがほしい!!!
その昔、写研さんが「ルリール体」
元 おニャン子クラブ 会員番号18番永田ルリ子さんの手書き文字から生まれた書体)を発表されたように!

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高知県立坂本龍馬記念館(高知市)で、坂本龍馬の筆跡を一文字ずつシールにして、
龍馬の手書き文字で個人の名刺を作るサービス(高知県立坂本龍馬記念館2013年「飛騰87号」参照) や、



くずし字、いろいろでは、任意の文字をくずし字に変換してくれるサイトもある。
この感覚と同じだと思うが、偉人たちの筆跡をフォントとして使えないものかと。。。
用途はかなり限られそうだけども、憧れている。

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 (文:制作部 K.N)