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第10回 「読書の秋」

季節もそろそろ秋。

秋といえば「読書の秋」です。(といっても私にとっては年中「読書の !!」ですが…)というわけで、最近読了した本の話など。

三木 笙子作『人魚は空に還る』東京創元社

明治40年代を舞台に、雑誌記者と美形の天才絵師とが繰り広げる事件ものです。とはいっても、殺人などではなく、人情味あふれる暖かな物語です。短編5本と読みやすく、キャラクターが個性的かつ魅力的なので、普段ライトノベルなどしか読まれないという方にもおすすめです。

表題作の人魚の他、真珠や絵画など、モチーフが美しいのも素敵ですし、時代考察も謎解きもしっかりしており、ジャンルを問わず楽しめると思います。が、逆にいわゆる本格ものを求める人には物足りないかもしれません。

個人的に一番面白いと感じたのは、この話におけるいわゆる「ホームズ役」と「ワトスン役」のキャラクターが「一般の認識とは逆になっている」というところだと思います。

どういうことかというと、(偏見かもしれませんが)一般的にホームズ役は、その名のもとになったシャーロック・ホームズのように、エキセントリックな天才(しかし、社会不適合者や性格破綻者が多い)というパターンがほとんど、というか全ての気がします。

この本も確かに一言で言い表すと、「記者である主人公が、自信溢れる美形の天才絵師に振り回されながら謎解きをする」という構成です。これだけを見ると、絵師がホームズ役と考えてしまうところです。が、実はこの話、謎を解くのは主人公。

ついでにいってしまうと、何かあった時戦うのも、事件の実質的な記述者的役割も主人公が担当しています。天才絵師は(たまに手伝ってはくれますが)謎の答えを要求するだけ、というなんとも不思議な関係です。

けれど、主人公が多少につけ相手に劣等感を持とうとも、二人はあくまで対等の関係であり、そこがすごく新鮮なのです。(とはいっても、主人公も自覚がないだけでなかなかハイスペックな人間なのですが…)

短編で読みやすく、推理物としても時代物としても敷居はそんなに高くないと思うので、普段あまり読書をしないという人にもおすすめの1冊です。せっかくの読書の秋ですので、よろしければ1冊、お読みになってはみてはいかがでしょうか。

京富士読書クラブ(1人ですが…)

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