京富士印刷 > WELCOME STAFF ROOM > 第49回 「その日」

WELCOME STAFF ROOM

第49回 「その日」

staffroom_49.jpg

 

 

「ここか・・・」
男は呟くと車を停めた。
紫煙を吐き出しながら口にしていたソレを、

今にも吸い殻が溢れ出しそうな灰皿に押し込む。
雨の滴のついたウィンドウ越しに見えるその建物は、
何と言った事も無い、コレといった特徴の無い物だった。
強いて言えば、玄関らしき扉の左方に大きく口を開けた箇所だが、
こういった場所ではそれも取り立てて珍しい物では無い。

 

-倉庫か?

 

外から窺い男は思う。
奥の方に何やら作業をしていると思わしき人影があるが、
まぁいい、自分が向かうべきはそちらでは無いだろう。

 

玄関口を見ながらこれまでを想う。
そう、ここが初めてでは無かった。
男は仕事柄、今まで何件もの業者に依頼を出してきた。
だが、その結果に満足出来た事は無い。
ある所では納期が間に合わなかった。
またある所では納められた商品の色がイメージと異なっていた。
時間・品質・値段。
思い起こせばキリが無い。
馴染みのBARである噂を耳にしたのは、半ば諦めかけていた そんな時だった。

 

-ダメで元々と思い此処まで来てみたが・・・

 

外からではこれ以上見るべき所も無い。
何より、いつまでもここでこうしていた所で埒はあかない。
男は車を降りると、煙草のにおいの染み付いたコートを羽織り歩き出す。

 

扉を潜り、カウンターに手を付き口を開く。
「すみません、印刷をお願いしたいのですが。」
途端に返ってくる声。
「いらっしゃいませー」
「おおきにー」

 

それだけで解った。
確信が胸を過る。

 

-此処だ。

 

気付くとコートが濡れていない。
雨は上がっていた。
口元に笑みが浮かぶのがわかる。

 

-今夜は旨い酒が呑めそうだ。

 

あくまで個人の感想であり実際の㈱京富士印刷とは
異なる場合が御座います。


っていうか、誰も京富士だとは言っていないしー。